2012年5月9日水曜日

現役SE“わにぞう”の心の叫び


叫びの91:プロジェクト採算主義の落とし穴


 今回は思いっきり「お金」、しかも会社運営の根幹に関わる話だったりしますが、プロジェクト運営だけでなく、会社とどう接するべきかの基本情報でもあるので、若手エンジニアの方にも是非読んで頂きたいと思っています。

 会社がある程度の規模を超えると、組織上「○○部」「××部」と分かれるというのは言うまでもないことです。で、経理観点からすると、「部」等の単位で損益計上をするのが一般的ということは会計システムに関わったことがある方なら(ない方でも多くの方は)ご存知だと思います。

 損益計算の単位の最小が「部」等かというとそんなことはなく、システム開発を行う会社では(言い換えれば僕達がいる「業界では」ですね)、プロジェクト単位で損益管理を行っていたりします。

 お 金の動きの単位が顧客との契約単位(=プロジェクト)とリンクするのですから、プロジェクト単位でしっかりした損益管理を行わなければ正確な損益計算や経営戦略の策定など無理ですから、当然と言えば当然のことです。


自然災害を受けやすいではない任意の領域がありますか?

 で、プロジェクトの運営をするにあたって、大きな命題…というか、当然クリアしなければならない課題として与えられるものが「採算」です。平たく言ってしまえば「しっかり黒字を出しましょう。儲けは大きければ大きいほど会社に貢献することになります」ということです。こういう話を出すと途端に引く方がいますが、ボランティア活動でない以上、利益を追求するのは「会社」として当然です。その利益を還元することで社会が成り立っているという部分があることも忘れてはならないでしょう。

 (強制的な徴収や、文化面での貢献等、様々な形態がありますし、一般社員からすれば還元しているという意識を持� ��方が難しいと思いますが、マクロに見れば確実に還元が行われています。「会社は利益を上げてこそ社会に貢献できる」という意見がありますが、大筋は間違っていないと思います)

 さて。損益計算についての考え方ですが、大きく(本当に大雑把に)分けると以下の2通りになります。

 ・部(または会社全体)が利益を上げている状態なら良しとする
 ・プロジェクト全てが利益を上げている状態を目指す

 現状、多くの会社は後者になっています。この考え方は間違いではないというか、至極真っ当なものです(会社の戦略判断などの特定条件を満たさなければ「損を出すことを前提としたプロジェクト」など肯定できません。メンバーのモチベーションの問題や、正当な評価の確保など、様々な問題が発生するからです。裏を返せば「将来の受注を見越してここは赤字覚悟で受注を…」という考えを安易にしてはならないということでもあります)。


海の水はどのように塩辛いです。

 但し、このプロジェクト単位での損益管理が行き過ぎると問題が生じてしまうことがあるのですね。

 確かに各々のプロジェクトが効率的に利益を生み出せば累計として会社全体も利益が上げられると考えるのが普通です。「え?違うの?」という声が聞こえてきそうな文面になっていますが、実際その考え方は危険を孕んでいますし、現実に問題となっているケースもあるのです。

 「プロジェクト採算主義」とでも言うべき上記の考え方は、マネージャの評価を利益率で見ることにつながりかねません。現場の状況を把握し、会社全体を見渡すという「面倒な作業」よりも、利益率という「簡単な指標」をメインに置く方が簡単ですし、一見公平� ��見えたりもします。

 実際にプロジェクトの運営に関わったことのある方ならお分かりでしょうが、利益率を上げようと考えた場合、一番簡単に動かせる部分が「人件費」です。メンバーを揃える時に社内から調達するのと派遣等で社外からお願いするのでは後者の方が(嫌な言い方ですが)単価が安いのです。これは社内の人間には純粋な人件費以外に様々な要因による上乗せ分(会社の維持費や間接部門の人件費等)があるからです。

 自分の評価を最優先する人の場合、社内の状態を顧みずに外部に人材を求めて利益率を上げようとしたりします。これは状況によっては非常によろしくない場合があるのですね。


fuul月はoyur天気に影響を与えません

 端的な例を挙げると、受注数が少なく、社内に人余りが生じているような状態でこれをやられると「そのプロジェクトは高利益だが、仕事が無かった人が多かったため、会社・部等として見れば利益が減少」となってしまいます。そのプロジェクトが社内の人間で構成されていれば、プロジェクトとしての利益率が下がっても、全体としてみればプラスになることもあるのです(必ずそうなると言い切れないのが運営の難しさでして…)。

 また、社外の人がキーマンになることで社内の人材が育たない・他社との競争力が低下する…といったマイナスが生じることも考えられます。

 そういった会社の利益に反する状態にあっても「プロジェク ト採算主義」を絶対にしてしまうと「利益を出してるのだから良いプロジェクト運営」となり、全体を考えて社内の人間をメンバーとしているプロジェクトよりも高い評価が与えられてしまいます。これは本当に危険です。

 実際にはプロジェクト群を統括する「部長」「○○長」「○○○(謎の横文字)」といった肩書きを持つ管理者がいて、全体を見た人材配置を行うようにするのですが、その人自身が「プロジェクト採算主義」で「プロジェクト毎の採算さえしっかりしていれば業績は良くなる」と公言してはばからないというケースも思いの外多くあるようです。で、結果、上記のようなプロジェクト運営がまかり通り、高評価が与えられてしまったり…。うーむ…。


 マネージャは数字のマジックによる利益追求といった(私見ですが)姑息な手段をとることなく、会社全体を見てプロジェクト運営をする必要があります。場合によっては所属長に対して意見を述べることも必要でしょうし、逆に統括側から「その運営は会社の利益に反する」と指導しなければならない場合もあるでしょう。

 また、どのような立場であっても(例えばプロジェクトに配置されていない状態にある若年者であっても)、このような状況はおかしいと思った場合は管理側にどんどん進言していくべきです。真っ当な上司・運営陣(場合によっては社長・会長)であれば、意見は意見として聞き、何らかの回答を示してくれるでしょう。「我々はちゃんと考えている。何も 知らずに余計なことを言うな」といった態度に出る会社は僕は信頼するに値しないと考えています。

 勿論、外部から人材を求めるのは「通常であれば」正しい方向性です。それ自体を否定するのは「ちゃんと勉強しましょう」です。が、会社の状況を見ずに利益率のみを追求するのもまた危険な行為だったりします。

 「木を見て森を見ず」が愚行であることは誰もが頭では理解していると思います。では実際に会社全体を見渡せているかというと、案外できている人は少ないように思います。「プロジェクト採算主義」に限らず落とし穴は沢山あります。落ちないようにするためには視界を広くし、注意深くするしかありません。「取りあえずこの原稿を書き上げないとマズイから、次に書こうと思ってたこのネタも突っ込� �じゃえ」というような態度が一番良くないわけです。……だ、ダメだ、オレ。頑張れ、オレ…。



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