私の名前はラミール。グリーン王国で生まれ育ち、騎士となり、今ではグリーン王国防衛隊長を務めている。
そんな私が牙と初めて出会ったのは、私がグリーン王国防衛隊長となって直ぐのことだった。当時から、『ダンシングソード』という通り名を持ち、有名だった牙。その牙にまた一つ、新しい通り名が付けられることとなった、『レベル50モンスター』との戦い。そこで、私と牙は出会ったのだ。
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モンスターには、『レベル』というものがあることをご存知だろうか? これは『モンスター研究学会』が提示しているもので、モンスターの強さの目安となっている。ハンターはこのモンスターレベルを見て、仕事の依頼を受けるか否かを決定する。また、騎士はこ のレベルを見て、国民を非難させるかどうか決定している。
このモンスターレベル、最大レベルは50とされている。レベル50のモンスターの基準は『人の力ではどうすることもできないため、人類は逃げることしかできないモンスター』とされている。そのため、レベル50モンスターは『神獣』とか、『自然災害』といった別名で呼ばれるほど、人類に恐れられる存在である。
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そんなレベル50モンスターが、グリーン王国付近に現れたことがある。
「ウゴンガ!」
その大型モンスターは、巨大なゴリラの様なモンスターで、全長は40メートルほどあり、横幅も30メートル近くあった。全身は強力な魔力を秘めた漆黒の筋肉で覆われていて、目だけが不気味なライ� �グリーン色に光っていた。この大型モンスターはその鳴き声から『ウゴンガ』と名づけられた。
ウゴンガは過去に人類が遭遇したことのない、新種のモンスターであったため、直ぐにレベルを決定する『モンスター研究学会』の研究員を引き連れた討伐隊がウゴンガに接触した。
名前ARIESはどこから来たの
そこで、人類は驚愕した。ウゴンガの身にまとわれた漆黒の筋肉は強力な魔力を帯びていて、一切の魔法が効かなかった。さらに、弓や剣での攻撃も、爆撃による攻撃も、毒による攻撃も、一切効果が無く、かすり傷一つ付けられなかったのだ。つまり、『人類はウゴンガにダメージを与えることができない』ということが発覚したのだ。ダメージを与えることができないのであれば、人類はどうすることもできない。つまり、逃げることしかできない。そのため、ウゴンガは直ぐにレベル50モンスターとして認定されたのだ。
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そんなウゴンガがグリーン王国に興味を持つのに、そんなに時間はかから なかった。
「ウゴンガ!」
ウゴンガがグリーン王国に近づいてきたのだ。さいわい、一切の攻撃は効かないものの、ウゴンガの動きは非常に遅く、一日に数十メートルしか移動しないことも多かった。そのため、私は迅速にグリーン王国の国民を非難させることができた。しかし、少しずつでも確実に、ウゴンガはグリーン王国に近づいて来た。
グリーン王国内でウゴンガが暴れたら、国は滅んでしまう。国民の命を守れても、国を守れないんじゃ、防衛隊長失格だ!
私は、どうしてもこの愛しい母国を守りたかった。だから私は、わらにもすがる思いで、世界中のつわものに連絡をとった。どうにか、レベル50モンスターを倒せないか? 一緒に戦ってくれないか? と多くのハンターや騎士に声をかけたが、� ��も手を貸してはくれなかった。当然だ、レベル50モンスターの前では、人類は逃げることしかできないのだ。戦っても無駄死にするだけ。そんなの、バカでもわかる……。
私は完全にあきらめようとしていた。そのとき、一人の男だけが、私の呼びかけに答えてくれた。その男が、牙だった。
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「で、報酬はいくらだ?」
牙の第一声。レベル50モンスターと戦うというのに、まるで普通のモンスターと戦う様な表情で金の話をしてきた。
「いくらでも払う! お願いだ、この国を守ってくれ!」
ローマの接着剤はどこに由来する?
正直、期待はしていなかった。ちょこっと戦って、直ぐに退散し、その分の金を要求してくる、悪徳ハンターではないかと疑った。それでも、私にできることは、この牙という男に依頼することだけだった。無力な自分が、悔しかった。憎かった。
「わかった。じゃあ、ちょっくら行って来る」
牙はそう言うと、直ぐにウゴンガのもとへと向かった。
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『ダンシングソード』……噂は聞いていたが、実際にこの目で見て、すごい男だと思った。大型モンスターであるウゴンガとたいして変わらない大きさの巨剣を軽々と持ち上げ、振り回す姿はまさに『ダンシングソード』と呼ぶに ふさわしいと思った。さらに驚いたのは、その怪力以上に"タフ"であるということだ。牙という男は何と、3日間、不眠不休でウゴンガと戦い続けたのだ。
「ふぅー。さすがに疲れた。少し休んだらまた戦闘再開するから。とりあえず、飯食わしてくれない? 報酬の前借ということで」
私は、牙という英雄を悪徳ハンターと疑ったことを恥じた。
「……牙さん。もういいです。あなたは良くやってくれました。あなたの戦いから、私は力をもらいました。例えウゴンガに国を滅ぼされても、必ず再建してみせます。だから、もう戦わなくてもいいです……。報酬もちゃんとお支払いしますから」
確かに牙という男はすごかった。巨剣の一撃はすさまじく、最初は倒せるのではないかと思った。でも、3日間ぶっ続� ��で攻撃しても、ウゴンガは全くダメージを受けていなかった。やはり、レベル50モンスターを人間が倒すのは無理なのだと、私は悟った。
「いや、報酬はあのモンスターを倒してからもらうよ。時間はかかると思うけど。あいつ動き遅いから、このまま少しずつダメージを与えていけば、きっと倒せるぞ」
ダメージ? どこに? 私は目を凝らしてウゴンガの体を見た。するとどうだろう、どんなに強力な魔法でも、弓や剣の攻撃でもかすり傷一つ付かなかったウゴンガの肉体に、わずかだが傷が付いているのが見えた! 見間違えじゃない! 場所によってはうっすら血が滲んでいる所もある!
どのようにICTが仕事のスタイルを変更しました
その傷は、ウゴンガにとっては"蚊に刺された"程度のダメージなのだろう。だが、わずかでもダメージを与えることができたということに、変わりわないのだ。それはつまり、人類でもウゴンガを倒せる可能性がある、ということだ。
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私は『牙がウゴンガにダメージを与えた』という事実を世界中に報告した。そして、世界中から牙のサポートをしてくれる魔法使いやハンター達を募った。初めは誰も信じてくれなかったが、日が経つにつれ、有志は増えていった。
「ウゴンガ!」
「うぉおおおおおお!」
「ザシュ! ガシュ! ドン! ズン!」
「ウゴンガ!!」
私が指揮を執り、募った有志達に牙のサポートをさせた。魔法使いには、『肉体強化魔法』や『回復魔法』などを牙に絶えずかけるように指示し、他の人には食事の用意や牙が休んでいる最中にウゴンガの足止めをお願いした。魔法使いに関してはグループをいくつかつくり、魔力が切れたら、直ぐに次のグループと入れ替われるようにした。
こうして、人類は力を結束し、レベル50モンスターに始めて、正面から戦いを挑んだのだ。
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牙がウゴンガと戦い始めてから、3年の月日が流れた。牙は食事と排泄、一日数時間の睡眠以外の全ての時間、戦い続けた。その姿に心打たれた人間が次々とグリーン王国に集まり、万を超える人間が毎日毎日、� ��にエールを送った。
そしてついに、歴史的な日がやってきた。
「ウゴ、ウゴ……ンガ……」
「うぉおおおおおお!」
「ザシュ! ガシュ! ドン! ズン!」
「ウ……ゴ…………ガ……………………」
「ドシーーーーーン!!!」
巨大な音と共に、ウゴンガは前のめりに倒れた。
"蚊に刺された"程度のダメージでも、3年間続けば、命を奪える。牙はそれを実証したのだ。
「やったーーーーーー!!」
「牙さん、すげぇ!!!」
「ついにレベル50モンスターを倒したぞ!!」
「歴史的瞬間だ!!! こんな瞬間に立ち会えたなんて……」
万を超える群集がいっせいに声を上げた。そんな歓声の中、牙は私に向かってこう言った。
「腹減った。飯食わせろ」
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その日以来、牙は『レベル50モンスターを倒した唯一の男』という新たな通り名を手に入れたのだ。
私は以来、大型モンスターがグリーン王国付近に現れる度に、牙に討伐の依頼をするようになった。始めは牙に対して敬語を使っていたが、何回も会う内に、"こいつはバカだ"ということに私は気付いた。そのことに気付いてからは報酬の額を一気に減らし、割りのあわない仕事ばかり依頼した。それでも牙は、「割りにあわねぇ」と言いながら、一度も断ることをしなかった。今では、お互い我を張れる、良い友となった。
「ラミール隊長! 大変です。南の森に大型モンスターが出現しました!」
私が牙と出会った思い出にふけっていると、部下があせった様子で� �ってきた。
「レベルはどれくらい?」
「はっ! おそらく21レベルのモンスター、『ガリゲイオス』だと思われます」
「……そうか、それなら牙に頼もうかな」
私はそう呟き、直ぐに牙宛の討伐依頼書を書き始めた。当然、依頼額は相場の半額で。
~了~
~用語解説~
『肉体強化魔法』
肉体を強化する魔法の総称。攻撃力や防御力、スピードを飛躍させることができる。近年、肉体強化魔法による結婚詐欺が急増している。肉体強化魔法により、筋肉マッチョのフリをしたもやし魔法使い。デートの時だけ肉体強化魔法により、痩せているように見せていたデブ女。肉体強化魔法によって実年齢よりも若く見せていた70歳のおじいちゃん、などなど。容姿を変える目的で肉体魔法を使う結婚詐欺師が増えているのだ。そこのあなた、今付き合っている人はもしかしたら……詐欺かもしれませんよ、気をつけて。
『回復魔法』
体力や魔力を回復させる魔法の総称。強い魔力を持つ者であれば、どんな難病でも治すことができる。ただ、失恋した心を治すことだけは不可能である。それだけは、時が解決してくれるさ……。
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